技能実習生とは?

まずこの項では、「技能実習生」および「技能実習制度」とはどんな制度なのかについて、ご紹介していきたいと思います。
技能実習制度、または外国人技能実習制度とは、出入国管理及び難民認定法が定める「技能実習」の在留資格により、日本に在留する外国人が報酬をともなう実習をおこなう制度のことです。つまり技能実習生とは、国内の人手不足をおぎなう安価な労働力「出稼ぎ労働者」ではなく、日本で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域などへの移転をはかり、その地域の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として来日する人々なのです。

少子化の日本において介護技能実習生などの実習生の増加は人手不足の解消にも期待されています。

その理念・目的に反しないよう、技能実習制度には①技能等の適正な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行わなければならないこと②労働力の需給の調整の手段として行われてはならないこと、などの基準が設けられています。

技能実習生の基準

そんな技能実習生が、日本で円滑に実習生活をおくれるよう、日本語や日本の習慣についての学習、外国人が滞在する上で必要となる法的講習、そして各分野の専門的な講習を行うのが、「入国後講習」です。
とはいえ、技能実習生となるには基準が設けられており、日本語をまったく知らない人はそもそも実習生にはなれません。技能実習生の基準のひとつ「日本語の要件」では、「1号技能実習(1年目)において、日本語能力試験のN4に合格しているもの、もしくはこれと同等以上の能力を有すると認められるもの」とあります。
このN4というレベルは、小学校の低学年で習う程度の簡単な漢字を読むことができるレベルと言われています。また、日本語を聞いて理解をすることができる程度のレベル。とはいえ、日本の職場では明文化されていないルールが山ほどありますよね。日本人でも慣れるのに時間がいるそれらのルールに少しでも慣れやすくするためにも、「入国後講習」は重要でしょう。

漁業系

漁業分野でも人手不足が深刻化

漁業分野では、有効求人倍率が他産業と比較して高水準で推移しており、さらには2020年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響により国産食品の価値が高まり、漁業分野の人材確保がますます重要事項になってきました。
にもかかわらず、漁業分野の就業者は1998年に27万7000人から2017年15万3000人と半減しています。2017年の雇われの漁業就業者は、3年で約1割減少しているほか、漁業分野の有効求人倍率1.57倍、水産養殖作業員2.08倍の状態で求職者より求人が多い状態です。
さらに、漁業分野の雇われ就業者の約2割を締めている65歳以上の熟練の高齢労働者が引退していっていることから、日本政府は5年の間に約2万人が不足すると予想しています。
そんな深刻化する日本の漁業分野の人手不足を解消し、発展を図り、人々のニーズに応じた水産物を安定的に供給する体制を確保するために期待されているのが、漁業系の技能実習生です。

漁業系の技能実習生

水産庁では、毎年 2,000 人近い新規就業者を確保しています。それでも、現在も就業人数は減少の一途をたどっているため、農業分野と同じく漁業分野でも、「技能実習制度」・「特定技能制度」を利用した外国人労働者の雇用が重要視されてきています。
漁業系の技能実習生の業務内容は、次のとおりです。
漁船漁業は、「かつお一本釣り漁業「「延縄漁業」「いか釣り漁業」「まき網漁業」「曳網漁業」「刺し網漁業」「定置網漁業」「かに・えびかご漁業」「棒受網漁業」の9つの作業で区別されます。養殖業は、ホタテガイ・マガキ養殖作業の1つ職種となっていますので、合計で2職種9作業です。
本来「技能実習制度」とは、発展途上国の若者を技能実習生として受け入れ、実務を通じて習得した技術や知識を母国の経済発展に役立てることを目的とした公的制度です。単なる「使い捨て」の労働者として扱わないよう、漁業業界全体で様々な取り組みがなされています。

農業系

農業系の技能実習生

もう何年も前から日本の農業分野では、深刻な高齢化と後継者不足という問題があり、農業業界全体が人手不足となっています。日本の農業就業人口は、2010年に約260万人。そして2019年には168万人となり、約10年で約100万人が減少しました。また、農業就業者の平均年齢も高齢化が進んでおり、2010年に65歳だったのが、2019年には67歳と引き上げられています。
そんな中、日本の農業分野では人手不足を解消するため、外国人労働者の雇用が可能な、技能実習制度、特定技能制度が重要視されてきているのです。
前項でもご紹介しましたが、「技能実習制度」とは、日本企業が発展途上国の若者を技能実習生として受け入れる公的制度です。その目的は、「実務を通じて習得した技術や知識を母国の経済発展に役立てる」国際貢献ですが、人手不足が深刻化する農業分野においては、労働力不足のカバーといった側面もあります。現在認定農業者の約11%が、技能実習生を受け入れています。

「特定技能制度」

「特定技能制度」とは、2019年4月より導入された新たな在留資格です。日本国内において人手不足が深刻化する14業種で、労働力の獲得を目的として外国人の就労が解禁されました。農業分野もその一つです。
農業系の技能実習の業務内容として、耕種農業は施設園芸、畑作・野菜、果樹の3つの作業で区別され、畜産農業は養豚、養鶏、酪農の3つの作業で区別され合計で2職種6作業となっています。農業においての技能実習の対象となる職種・作業については、必須業務・関連業務・周辺業務の3区分に応じ、それぞれ条件に適合することが必要です。
まず「必須業務」。技能実習生が修得をしようとする技能等に関する技能検定、またはこれに相当する技能実習評価試験の試験範囲に基づき、技能を修得するために必ず行わなければならない業務です。
「関連業務」。必須業務に従事する人によって、必須業務に関連して行われることのある業務であって、修得をさせようとする技能の向上に直接、または間接に寄与する業務です。
「周辺業務」。必須業務に従事する人が必須業務に関連して通常携わる業務です。全実習時間における作業時間の割合は、実習時間全体の3分の1以下です。

建設関係

建設関係の技能実習生

いまや他分野で活躍中の技能実習生。そのひとつが、建設関係の企業や現場です。先に、技能実習制度にはいくつかの基準が設けられていると説明しましたが、建設関係での基準はつぎのようなものです。
まず、常勤職員数には、外国にある事業所に所属する常勤の職員、技能実習生、外国人建設就労者及び1号特定技能外国人を含めないこと。つぎに、企業単独型・団体監理型ともに、1号実習生の人数が常勤職員の総数を超えないこと。2号実習生の数が常勤職員数の総数の2倍を超えないこと。3号実習生の数が、常勤職員数の総数の3倍を超えないこと。
これらの建設関係の作業に従事する技能実習生の数の基準は、令和4年4月1日より施行されます。現在技能実習1号・2号の実習生が常勤職員数より多い場合は、その令和4年4月1日までに調整する必要があります。皆さんも各種報道でご存じかと思いますが、建設関係での技能実習生の失踪が多発したことにより、技能実習等基準が強化されています。

受け入れ基準の厳格化

建設関係での技能実習生の失踪は、一時期毎週のように報道されました。それを受けて建設関係での技能実習席の受け入れ基準はより厳格なものに変わっています。
まず、「建設業法第3条」の許可を所得していなければ、これから新規の技能実習生の受け入れはできません。そして、受け入れ企業、技能実習生ともに「建設キャリアアップシステム」の登録が必要になります。さらに、2024年までにすべての建設にかかわる技能者の登録が求められています。
また、技能実習生に報酬を安定的に支払うことを目的に、天候を理由とした休業も含め、使用者の都合による休業の場合には労働基準法に基づき、平均賃金の60%以上を支払う必要があります。休業する日について本人から年次有給休暇を取得する旨の申出があった場合、年次有給休暇とすることもできます。
それから、技能実習生を受け入れる建設関係の企業は、監理団体への加入が必要です。各監理団体を通して技能実習生の受入れを行うことになります。